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From Publishers Weekly 『Quicksilver』（2003年刊）の続編である本書は、血沸き肉躍る広大な物語だが、愛すべき大泥棒ジャック・シャフトウと、勇敢な女スパイで、かつてトルコのハーレムの虜だったラ・ジュール伯爵ことイライザが並行して活躍する、あまりにも錯綜する派手な物語を読み進めるうちに、どんなに熱狂的な本シリーズのファンでもときどき、まさに本書の題名どおり―「混乱（the confusion」）―の気分に陥るのではないだろうか。
1689年、ジャックはアルジェで記憶を回復し、ガレー船漕ぎの奴隷生活を脱出して、スペインの海賊カルロス・オランチョ・マチョ・イ・マチョの失われた宝物を探す仲間に加わった。
彼は、海洋冒険作家パトリック・オブライエン顔負けの大海原を舞台にした大冒険に乗り出すものの、やがて恐怖の異端審問裁判にかけられるはめになり、間一髪で命拾いする。
一方イライザは、赤ん坊を連れてイングランドに逃れる途中で、歴史にその名を残すフランス人海賊ジャン・バールに捕らわれてしまう。
折りしも、ルイ14世の廷臣たちの陰謀に巻きこまれていた彼女は、その追手をもかわさなければならない。
異端審問に比べれば若干危険度は欠けるものの、それでも孤立無援の彼女が不安で眠れぬ夜を過ごすには充分だった。
イライザはウィルヘルム・ライプニッツのようなすぐれた科学者と交流があり、現代科学の基礎となる発見が作品中に次々に登場する。
はっきり言って-切れ味のよさ-とは無縁な作品だが、ディテールや語りの豊かさが舞台設定に迫真性を、登場人物に深みを与えている。
それだけで充分一読の価値があるだろう。

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